RD-E:0401 運転席側エアバッグ
折り畳まれたマルチチャンバー型均一圧力エアバッグがヘッドインパクターに向かって展開します。
エアバッグの全体的な展開段階を正確に予測することは、自動車の乗員を保護するために不可欠です。用途が独特であることから、エアバッグにはさまざまなモデル化方法があります。
この例の目的は、簡潔なマルチチャンバー型エアバッグが展開してインパクターにぶつかる様子を示すことです。このエアバッグは、初期状態では4本の折り畳み線に沿って折り畳まれているので、チャンバー間の連結を使用してモニター体積でモデル化します。このモデル化は均一圧力の考え方に基づいているので、コントロール体積(チャンバー)全体に均一な圧力分布を適用します。
エアバッグの現実的な物理的状態を、次の理想気体の状態方程式を使用してきわめて簡潔なモデルに転換します:
- エアバッグの内部圧力
- エアバッグの体積
- エアバッグ内部の気体質量
- 気体温度
- 一般気体定数
局所的な圧力分布と気体速度分布が存在する物理的なエアバッグを、バッグのパートごとに、各エアバッグチャンバー内部の圧力と温度を均一とした均一圧力の記述に変更します。気体ジェネレーターは、注入質量の流速と気体温度を制御する荷重曲線で表現します。ベントホールまたは多孔繊維を通じて気体が流出します(図 2)。
より高度な手法(有限体積法:FVM: Finite Volume Method)を別の例で扱います。
使用されるオプションとキーワード
使用する単位:Mg mm s
- /MAT/LAW19 (FABRI)(エアバッグの繊維をモデル化する弾性直交異方性材料)
- /MAT/GAS/MASS(単位質量あたりのCp(T)係数)
- /MAT/LAW0 (VOID)(ボイドまたは何もない空間として機能する要素を定義します)
- /PROP/TYPE9 (SH_ORTH)(直交異方性プロパティを持つシェルの定義)
- /PROP/INJECT1(構成気体ごとの注入質量を記述します)
- /PROP/TYPE4 (SPRING)(1つの並進自由度を持つスプリングのプロパティ)
- /PROP/TYPE1 (SHELL)(シェルプロパティのセット)
- /INTER/TYPE19(エアバッグの自己接触)
- /RWALL(無限大の剛体平面)
- /BCS(固定インフレーター)
- /SENSOR(エアバッグのTTFを設定する時間センサー)
- /DAMP(節点のセットに適用する、質量と剛性のレイリー減衰係数)
- /MONVOL/COMMU1(エアバッグのモニター体積の連結)
入力ファイル
モデル概要
約80リットルのエアバッグが4本の折り畳み線に沿って折り畳まれています。
- 材料特性
- 値
- 密度
- 0.85 x 10-10
- ヤング率
- 両方の方向に500
- せん断係数
- 10 (G12, G23, G31)
- 減少係数
- 0.001
プロパティセットは/PROP/SH_ORTH(シェル直交異方性、TYPE9)で、積分点を1つとして繊維材料の曲げ剛性を無視します。デフォルトの3節点三角形要素定式化を使用します。
モデリング手法
- 繊維層
- 連結サーフェス
布のサーフェスは9つのサブセットに分割され、それぞれのモニター体積に対して1つになります。それぞれの "モニター体積" は更に2つの部分に分割されます。繊維層のすべてのパートは同じプロパティとmat_IDを有しています。
折り畳み部分への空気の伝播を近似的にシミュレートするために、9つの連結体積を使用してエアバッグをモデル化します。これらの体積間の連結サーフェスは、ダミーの膜を使用してシミュレートします(図 4)。このダミー膜は、ボイド材料(/MAT/LAW0 (VOID))を使用したシェルを使用してモデル化します。
各エアバッグチャンバーのモニター体積は、サーフェスの集合として定義します。この体積は閉じている必要があり、シェルの法線は外側を向きます。使用するモニター体積をCOMMU1タイプのエアバッグとして、連結を使用します(チャンバー型で連結がある折り畳んだエアバッグ)。モニター体積に関して詳細は、Radioss Theory ManualのCOMMU1 Typeをご参照ください。
気体材料は、別の/MAT/GASカード(MASSタイプを使用)で指定します。これらのカードに、気体の分子量MWや比熱係数Cpa、Cpbなどを多項式関数Cp(T)で記述します。
インジェクターのプロパティ/PROP/INJECT1には、構成気体ごとの注入質量を記述します。最終注入質量は47gとして、中央のチャンバーに注入します( および =1)。時間で制御する注入気体の質量と温度を2つの関数で指定します(関数識別子: および )。
- プロパティ
- 値
- Mu(体積粘性)
- 0.001(デフォルト)
- Pext(外部圧力)
- 0.1
- T0(初期温度)
- 296.0
- Ittg(時間推移フラグ)
- 3
- Njet (インジェクターの数)
- 1
- ベントホール膜表面面積
- 1000mm2(Avent = 0)が直ちにアクティブになります
- コミュニケーション領域
- 合計(Acom = 1とScom = 0)
インターフェース
- エアバッグの自己接触をモデル化するには、接触インターフェース/INTER/TYPE19を使用します。この接触では、サーフェス間接触とエッジ間接触を組み合わせ、同じセカンダリ / メインサーフェスに基づいたサーフェス入力を使用します。このインターフェースのメインサーフェスとセカンダリサーフェスは、/SURF/PARTを使用して定義します。サーフェス間接触とエッジ間接触にそれぞれ異なる接触パラメータを使用する場合は、/INTER/TYPE19の接触を、/INTER/TYPE7(節点とサーフェスとの自己接触)と/INTER/TYPE11(エッジ接触)に置き換えます。
- 展開する前の布の相の間の距離は非常に小さくなります。初期貫通を回避するには、Inacti=6を使用して接触ギャップの厚みを自動的に縮小します。シミュレーションの開始時に、接触に初期交差が存在しないことが必要です。
- 接触が発生している領域でエアバッグを通じた排気を防止するために、Ibag=1の設定をお勧めします。
- 繊維厚に近いGapmin=0.3の接触厚みを使用します。
時間ステップコントロール
標準的な衝突シミュレーションの時間ステップを使用するモデルでは、節点の時間ステップコントロール/DT/NODA/CSTを使用します。モデルの安定性を確保するために、/DTIXを使用して最大時間ステップを設定します。この設定は通常は不要です。衝突シミュレーションの時間ステップは、通常はシミュレーションの他のパートによって制御されるからです。
インパクターヘッド
ダミーヘッドは、衝突試験ダミーの簡素化したヘッドとしてモデル化し、剛性パートとします。このヘッドは、どの方向にも回転できないように拘束します。このヘッドでは、z方向の並進のみが可能です。