ランダム応答疲労解析
ランダム荷重下の構造の疲労寿命の検討。
セットアップは、ランダム応答解析のセットアップと同様で、疲労サブケースが追加されています。FATLOADエントリのLCIDフィールドは、ランダム応答解析サブケースのサブケースIDを参照します。
ランダム応答解析から得られるパワースペクトル密度(PSD)は、サイクル数対応力範囲の確率密度関数を生成するために使用される、モーメント( )の計算に使用されます。
PSDモーメントは、次に示すように、ランダム応答解析から生成される応力PSDに基づいて計算されます。
入力
ランダム応答疲労を計算。
パワースペクトル密度(PSD)モーメント
モーメントは、次の式に基づいて計算されます:
- 周波数の値
- 右記の周波数でのPSD応答値;
の安定は、PARAM, CHKM0, YES設定によってチェックされます。周波数間隔をさらに細分化する必要がある場合は、警告が表示されます。
応力範囲の存在確率の計算
各binセクション内の最初と最後の応力範囲値の間に応力範囲が存在する確率の計算は、ユーザーが定義します。
と の間に応力範囲が存在する確率 は、 となります。
確率密度関数(応力範囲に対するサイクル数の確率密度)
上記のとおり計算されたPSDモーメントは、応力範囲の確率密度関数 の生成に使用されます。この関数は、FATPARM上のRNDPDF継続行で指定された損傷モデルに基づきます。現在、DIRLIK、LALANNE、NARROWおよびTHREEオプションを損傷モデルの定義に使用できます。また、複数の損傷モデルがサポートされています(指定した損傷モデルからの出力には、最悪の損傷が選択されます)。
DIRLIKは、確率密度関数の決定への閉じたフォームの解を公準化します:
- 不規則性要因
- 応力範囲
LALANNEランダム疲労損傷モデルは次のように確率密度関数を示します:
- 不規則性要因
- 応力範囲
狭帯域ランダム疲労損傷モデルは、次の確率関数を使用します:
ここで、 は応力範囲です。
狭帯域モデルでは、不規則性要因が0.95未満である場合、OptiStructは不規則性要因が小さ過ぎるという警告を発します。信号が狭帯域にある際、理想的には不規則性要因は1.0であるべきです。
デフォルトではOptiStructは、狭帯域にはゼロクロッシングの数( )をピークの数( )の代わりに使用します。これは、 を含んだ数値計算が数値的に不安定に陥ることがあるためです。信号が理想的に狭帯域にある場合、ゼロクロッシングの数とピークの数はほぼ等しくあるべきです。しかしながら、PARAM,NBZRCRS,NOを用いて狭帯域にOptiStructがピークの数( )を使うよう切り替えることが可能です。
Steinberg 3-Bandランダム疲労損傷モデルは、次の確率関数を使用します。
他の損傷モデルとは異なり、THREE帯には以下の値が確率です(確率密度ではない)。これは、他のモデルが小文字 を使うことに対し、大文字 を使うことでも明らかです。THREE損傷モデルでは、下記の確率を直接使用し、 に時刻歴全体のゼロクロッシングの総数を掛けることによって計算します(THREE以外の他のモデルの場合、確率密度値はまずDS (bin size)を掛けることで確率を得ます)。
ここで、 は応力範囲です。
- FACSREND
- 応力範囲の上限(SREND)を計算します。これは、SREND = 2*RMS Stress*FACSRENDのように計算されます。RMS応力はランダム応答サブケースから出力されます。着目する応力範囲は、SRENDにより制限されます。SRENDを上回る応力は、ランダム疲労損傷計算では考慮されません。
- SREND
- 応力範囲の上限を直接指定します(SRENDが空白の場合、FACSRENDに基づいて計算されたSRENDが使用されます。
- NBIN
- 確率を計算する応力範囲(DS = の幅を計算します(図 2)。デフォルトは100で、最初のbinは0.0から始まり までとなります。応力範囲の幅は、DS=SREND/NBINのように計算されます。
- DS
- 応力範囲の幅( )を直接定義します。(DSが空白である場合、NBINに基づいて計算されたDSが使用されます)。
応力範囲の存在確率の計算
各binセクション内の最初と最後の応力範囲値の間に応力範囲が存在する確率の計算は、損傷モデルに基づきます。
between と の間に応力範囲が存在する確率 は、 となります。
確率は、上で定義された確率関数を用いて直接定義されます。明確にするために、ここで繰り返します。
ここで、 は応力範囲です。
THREE損傷モデルについては、binは3つのみです。各応力範囲におけるサイクル数(2*RMS、4*RMS、6*RMS)は、対応する確率をゼロクロッシングの総数に直接掛けることにより計算されます(ゼロクロッシングの数の計算については、以下のセクションを参照のこと)。
損傷モデルの選択
- これより前のセクションでは、応力のPSDモーメントが対応するモーメントの計算に使用されることが説明されましたが、これを用いて、応力範囲の確率密度関数が決定されます。
- DIRLIKおよびLALANNEモデルは、応力範囲スペクトラムのより広範な分布にわたる確率を生成します。したがって、これらのモデルは、入力のランダム信号が、複数の周波数にわたる様々な応力範囲から成る際に使用されるべきです。ゆえに、DIRLIKとLALANNEが使用されている場合、確率密度関数内の情報は、より広範な応力範囲の分布をより良く捕捉します。
- 応力範囲が、高確率である特定の応力範囲分布と密に関連していることが期待されるランダム信号には、NARROWモデルが適しています。したがって、入力のランダムデータが広範にわたる応力範囲分布を擁さず、分布が主として特定の応力範囲に集中している場合、この特定の応力範囲またはその周辺で最も高確率である応力範囲が期待できるNARROWを選択すべきです。
- THREEモデルはNARROWと同様ですが、ランダム信号の分布が1*RMSとの関連に加え、2*RMSおよび3*RMSとの関連が少ないながら含まれていることが前提となっているところが異なります。したがって、入力のランダムデータが主として1*RMS内の応力範囲の周辺に多く見られ、2*RMSおよび3*RMS周りでは少ない場合、THREEを選択すべきです。
ピークおよびゼロクロッシングの数
元の時間領域ランダム荷重での1秒当たりのゼロクロッシングの数(周波数に基づくランダムPSD荷重はここから生成されます)は、次のように決定されます:
元の時間領域ランダム荷重での1秒当たりのピークの数(周波数に基づくランダムPSD荷重はここから生成されます)は、次のように決定されます:
ここで、 は、パワースペクトル密度(PSD)モーメントで示されるとおり計算される対応するモーメントです。
THREE帯およびNARROW帯のサイクル総数は、次のように計算されます:
DIRLIK, LALANNEおよびNARROW (PARAM,NBZRCRS,NO)
ここで、 はFATSEQバルクデータエントリのT#フィールドで与えられる合計暴露時間。
応力範囲 でのサイクルの合計数は、次のように計算されます:
疲労寿命と損傷
疲労寿命(破壊までのその材料の特定の応力範囲 のサイクルの最大数)は、次のように、材料SN曲線に基づいて計算されます:
ランダム荷重の適用からもたらされる合計疲労損傷は、次に基づいて計算されます:
ゼロでない平均応力をもたらすような荷重による平均応力補正を考慮するには、そのような荷重(通常は重力荷重)から成る静的サブケースを定義します。この静的サブケースは、RANDOM継続行のSTSUBIDフィールドで参照されます。