ベルト-プーリーサブシステムの作成

ベルトプーリーシステムでは、回転するプーリーに巻き付けられた長い柔軟なベルトによって機械動力が伝達されます。この動力伝達は、ベルトとプーリーサーフェス間の摩擦を通じて行われます。MotionViewのベルトプーリーサブシステムは、最小限の入力でこのようなシステムを迅速にアセンブルすることを可能にし、プロセスを効率的に簡素化します。

このベルトプーリーシステムは、ユーザー定義の参照マーカーのXZ平面内でアセンブルされます。すなわち、このマーカーのXZ平面は、プーリーの中心によって形成される平面と揃えられます。参照マーカーの向きを設定することで、ベルトプーリーシステムを全体座標系内で回転できます。NLFEベルト定式化を伴う場合のみ、参照マーカーはグローバルフレームに揃えられている必要があります。
MotionViewは、次の3種類のベルトプーリーシステムを提供しています:
  • 非線形有限要素(NLFE)ベース – ベルトは、一連の結合された非線形有限要素ビームとしてモデル化されます。このモデルは、正確なベルトの応力とひずみを返す忠実度の高いモデルを必要とする場合に使用します。
    注: これらのシミュレーションは実行に長時間を要します。
  • 離散化剛体 – ベルトは、ブッシュによって結合された一連の剛体としてモデル化されます。このモデルは、ベルトプーリーシステムの全体的な動きに関心がある場合に使用します。これらのシミュレーションは通常、NLFEや部分構造の弾性体よりも高速です。
  • 部分構造の弾性体 - これはバージョン2024で使用できる試験的な機能です。ベルトは、固定ジョイントで接続された一連の線形(CMS)弾性体としてモデル化されます。この方法は、NLFE定式化よりも高速で、離散化された剛体定式化よりも忠実度の高い解を提供します。
Formulation NLFE 離散化剛体 部分構造の弾性体
Speed 非常に低い 高い 中程度
Accuracy 高い 低い 中程度

ベルトプーリーシステムを作成するには、以下の手順を実行します:

  1. アセンブリリボンから Belt/Pulleysアイコンをクリックします。
    Add a Belt-Pulley Subsystemダイアログが表示されます。
  2. Systemコレクターをクリックして、ベルト / プーリーをどのシステムに作成するかを決定します。
  3. ベルト / プーリーの変数名とラベルを指定します。
    デフォルトで、MotionView内のエンティティの変数名は特定の規則に従います。例えば、すべてのベルト / プーリーエンティティの変数名はbp_で始まります。これは、MotionViewでモデルを構築する場合に従う推奨規則であり、モデル編集やモデル操作において様々なメリットが得られます。
  4. Belt Formulationドロップダウンメニューから、ベルトを表すベルト定式化のタイプを選択します。
  5. グローバルフレーム以外の参照フレームを使用する場合は、Markerコレクター(ダイアログの左下部分にあります)をダブルクリックして、プーリーの座標の参照マーカーを選択します。
    ベルトプーリーシステムのアセンブリが参照フレームのXZ平面内に存在するように、ベルトプーリーシステムが作成されます。
  6. デフォルトで、2つのプーリーを使用できます。プーリーを追加または削除するには、プーリー番号を示す行項目で右クリックオプションを使用します。
  7. 参照マーカーの座標フレームに、プーリー中心のX座標とY座標の値を入力します。
  8. ベルトの半径の値を入力し、ベルトループの内側と外側のどちらがプーリー上に位置するかをドロップダウンメニューで指定します。
  9. 作成するプーリーの合計数を指定します。
    プーリーを追加または削除すると、この欄は自動的に更新されます。
  10. ダイアログの右側部分にあるテキストボックスに、ベルトの幅と厚みの値を入力します。
  11. 線形弾性ベルトゴム材料がMotionViewに用意されていて、デフォルトで選択されます。別の材料を使用するには、MaterialPropertyコレクターをダブルクリックして、リストから材料を選択します。
  12. NLFEベルト定式化を作成するには、以下の手順を実行します:
    1. NLFE Belt Component領域に、計算したベルトプロファイルに基づいてベルトを正確に表現するために最小限必要なNLFEビーム要素の数が青色で表示されます。デフォルトでは、最小限必要な要素数が使用されます。使用する要素の数を多くするには、Use minimum requiredオプションを非アクティブにして、作成するNLFEビーム要素の数を指定します。
    2. ベルトの設置位置で計算したベルトのプロファイル長に基づく有効直径も青色で表示されます。このダイアログでは、設置した状態の自由直径から既知のオフセット量を差し引いた自由直径の値がデフォルトで設定されます。ベルトの自由直径に別の値を指定するにはUse calculated valueオプションを非アクティブにします。
      注: ここで指定する数値は、ベルトに十分なプリテンションがかかるように、設置した状態のベルト直径より小さい値にする必要があります。自由直径と設置直径の差が大きいほど、プリテンションが大きくなります。
  13. 離散化剛体のベルト定式化を作成するには、以下の手順を実行します:
    1. このダイアログのBelt Stiffness Propertiesセクションで、ベルトの長さ方向の引張剛性と引張減衰の値を入力します。
    2. ベルトの曲げ方向の曲げ剛性と曲げ減衰の値を入力します。
    3. ベルトのプリテンションの値を入力します。
    4. Belt Contact Properties (Impact)セクションには、Impact法によるContactパネルにあるパラメータと同じパラメータが表示されます。各パラメータの詳細については、Contactsツールのトピックをご参照ください。
  14. 離散化剛体のベルト定式化を作成するには、以下の手順を実行します:
    1. ベルト初期荷重の値を入力します(力の単位で)。
    2. Belt Contact Properties (Impact)セクションには、Impact法によるContactパネルにあるパラメータと同じパラメータが表示されます。各パラメータの詳細については、Contactsツールのトピックをご参照ください。
  15. 上記情報のすべてを入力したら、OKをクリックしてベルトプーリーシステムを作成し、ダイアログを終了します。
    注: 部分構造の弾性体の場合は、弾性体(CMS)がベルトセグメントのバックグラウンドに自動的に作成されます。
    作成されたNLFEベルト-プーリーシステムには以下のアーキテクチャがあります:
    エンティティ 詳細
    Bodies 一連の非線形ビーム有限要素で構成された剛性プーリーボディとNLFEベルトボディ。
    DataSet 編集可能なすべての値が格納されるデータセット。ベルトプーリーシステムの構築後は、このデータセットを通してベルトの自由直径や幅を変更できます。
    Points 未設置ベルトプロファイルとプーリーの中心を定義するポイント。デフォルトで非表示になります。
    Graphics プーリーのグラフィックス。
    Joints プーリーと結合するボディ間の回転ジョイント。加えて、モーションの伝達を支援するプーリーとベルトボディを結合するジョイントもあります。
    Markers ベルトの未設置構成を定義するための参照マーカー(デフォルトでは非表示)。
    Templates 現時点でMotionViewでサポートされていないNLFEステートメントが含まれています。これには、プーリーの外周上のGRIDS、ベルトGRIDとプーリーGRID間の接触をモデル化するLINE2要素、ベルトプーリー平面の法線に沿ったプーリーでベルトを制約するCONN1要素などがあります。
    離散化した剛体ベルトプーリーには以下のアーキテクチャがあります。
    エンティティ 詳細
    Bodies 一連の結合された剛体で構成された剛性プーリーボディとベルトボディが作成されます。
    DataSet 編集可能なすべての値が格納されるデータセット。ベルトプーリーシステムの構築後は、このデータセットを通してベルトの自由直径や幅を変更できます。
    Points ベルトプロファイルとプーリーの中心を設定するポイント。デフォルトで非表示になります。
    Graphics プーリーとベルトのグラフィックス。
    Joints プーリーと結合するボディ間の回転ジョイント。加えて、システム平面でベルトを固定するプーリーとベルトを結合するジョイントもあります。
    Markers ベルトの未設置構成を定義するための参照マーカー(デフォルトでは非表示)。
    Templates 接触で使用するグラフィックスを非表示にするMotionSolveコマンドステートメントが含まれています。
    部分構造の弾性体のベルトプーリーには以下のアーキテクチャがあります:
    エンティティ 詳細
    Bodies 一連の結合された剛体で構成された剛性プーリーボディとベルトボディが作成されます。
    DataSet 接触プロパティのデータセット。
    Points ベルトプロファイルとプーリーの中心を設定するポイント。デフォルトで非表示になります。
    Deformable Curve ベルトプロファイルポイントの弾性体上のマーカーを通過する可変形カーブ。
    Graphics プーリーのグラフィックス。
    Joints プーリーと結合するボディ間の回転ジョイント。ベルトの弾性体間の固定ジョイント。加えて、システム平面でベルトを固定するプーリーとベルトを結合するジョイントもあります。
    Markers ベルトの未設置構成を定義するための参照マーカー(デフォルトでは非表示)。可変形カーブで使用される弾性体上のマーカー。
    Solver Arrays 弾性体のモーダルIC配列をリストしているソルバー配列。
    Templates MotionSolveのステートメントによって、弾性体のモーダルIC配列と可変形カーブの接触定義が設定されます。
ヒント:
  • Show additional parametersを選択して、作成するポイントの変数名とラベルを指定します。
  • プーリーのX座標とZ座標、プーリーの半径、およびベルト側の各種パラメータを設定すると、ベルトプーリーシステムの構成がプレビュー画像に表示されます。プーリーを接線方向に結んでいるラインがベルトを表しています。互換性のない情報があると、そのベルトラインは表示されません。このような情報として、重複したプーリー位置、2つのプーリーの半径合計値より小さいプーリー中心間距離などがあります。クロスベルトおよび面外のプーリーの構成はサポートされていません。
  • デフォルトの設定に戻すにはReset to Defaultsをクリックします。

ベルト-プーリーシステムの編集

プーリーマウントボディの変更

デフォルトで、プーリーは回転ジョイントを経由してグラウンドボディに結合されます。これらのアタッチメントのいずれかを異なるボディに変更するには、モデルブラウザでBeltPulleyシステムを選択して、エンティティエディターのAttachmentsセクションでpulley_body_nというボディアタッチメント次のように変更します:
1.


ベルト材料の変更(NLFEベルトと離散化剛体のみ)

ベルトの材料を変更するには(NLFEベルトと離散化剛体のみ)、モデルブラウザでBeltPulleyシステムを選択して、エンティティエディターのAttachmentsセクションで、MaterialPropertyアタッチメント(Belt Graphic Material)をベルトプーリーシステムに変更します:
2.


注: システムの作成後に、部分構造の弾性体ベースの定式化のベルト材料を変更することはできません。

プーリー材料の変更

プーリー材料は、以下の方法で変更できます:
  • NLFEベルトと離散化剛体の場合は、プーリーのグラフィックシステムを選択して、エンティティエディターのAttachmentsセクションで材料アタッチメントを変更します:
    3.


  • 部分構造の弾性体の場合は、モデルブラウザでプーリーグラフィックを選択して、エンティティエディターのPropertiesセクションで材料を変更します:
    4.

ベルトパラメータの変更(NLFEベルトと離散化剛体のみ)

ベルトパラメータは、ベルト-プーリーシステム内で使用可能なデータセットParameters DataSetを通して変更することができます。

アクティブになっているパラメータは変更できますが、変更できないパラメータはグレイアウトされています。

5.


注: システムの作成後に、部分構造の弾性体ベースの定式化のベルトパラメータを変更することはできません。

離散化剛体の剛性パラメータの変更

離散化した剛体ボディベルトの場合は、剛性パラメータとベルト張力をデータセットParameters Stiffness DataSetを使用して変更できます。
6.


離散化剛体と部分構造の弾性体の接触パラメータの変更

離散化剛体または部分構造の弾性体からなるベルトの場合、ベルトとプーリー間の接触のパラメータは、それぞれデータセットParameters Contact DataSetとds_contactを通じて変更できます。
7.